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Web表現 2010

WWWとは何か? 簡単な歴史と仕組み

「WWW = インターネット」ではない

よくある用語の誤用として自分のホームページを指して「わたしのインターネットのページ」と呼んだり、Webページを閲覧できないことを「インターネットが読めない、インターネットが壊れた」と誤用されることがあります。意味としては通じるのですが、厳密に言うとこの使用法は正しくありません。なぜなら、「インターネット = WWW (World Wide Web)」ではなく、その中に含まれる一機能でしかないからです。

インターネットとは、インターネット・プロトコル(IP)技術を利用して相互接続されたコンピュータネットワークを指しています。そのIPネットワークを利用して使用される利用方法は全てインターネットに含まれます。そこには様々なものが存在しています。

  • telnet
  • 電子メール (SMTP)
  • ファイル転送 (FTP)
  • チャット (IRC)
  • ネットニュース (NNTP)
  • WWW (HTTP)

インターネットの歴史に比べると、WWWの仕組みは比較的最近に生まれたまだ歴史の浅い仕組みです。まず、WWWの歴史について学ぶ前に、インターネットの歴史を簡単に俯瞰します。

WWWに至るインターネットの歴史

  • 1957:ARPA (Advanced Research Projects Agency 高等研究計画局) 創設
  • 1960:Joseph Carl Robnett Licklider、タイムシェアリングシステムの概念の発表 (ARPANETの設計に直接影響)
  • 1969:ARPANET始動、UCLAとスタンフォード大
  • 1971:初のemailを送受信
  • 1979:USENET (ネットニュース) 開始
  • 1983:TCP/IPの採用
  • 1984:村井純が慶應義塾大学と東京工業大学を接続。日本におけるインターネットの起源 (JUNET)
  • 1985:全国科学財団による学術研究用のネットワーク基盤NSFNetが作られ、インターネットのバックボーンの役割がARPANETからNSFNetへ移行
  • 1988:商用インターネットがアメリカで開始
  • 1989:商用ネットワークとNSFNetとの接続が開始
  • 1990:ARPANET終了
  • 1991:Tim Berners-Lee、WWW発表
  • 1993:Mosaic発表 (後のNetscape)
  • 1995:Yahoo! 設立
  • 1998:Google設立

より詳細なインターネットの歴史については、下記の資料を参考にしてみてください。

WWWの仕組みの根幹「ハイパーテキスト (hypertext)」

インターネットの技術の発展の恩恵をうけてWWWは成立したのですが、その他にもう一つ重要な発明が存在がその成立に大きく貢献しています。これはハイパーテキスト(Hypertext)と呼ばれる仕組みです。

ハイパーテキストとは、複数の文書を相互に関連付け、結び付ける仕組みのことです。「テキストを超える」という意味から「hyper-(~を超えた)」 「text(文書)」と名付けられました。テキスト間を結びつける参照のことを「ハイパーリンク」と呼んでいます。

ハイパーテキストの歴史 1 – “memex” ヴァネヴァー・ブッシュ (1945)

アメリカの研究者、ヴァネヴァー・ブッシュは、1945年The Atlantic Monthly誌に”As We May Think”という記事を発表しました。この記事の中で、ブッシュは、従来の図書館的な情報の検索システム(目録)では、原題の情報量の爆発的増加に追いつかなくなってしまうという危機を予測し、そのためには新たな情報の記録、検索システムについて考察しました。

この記事の中で提案された架空の装置が「Memex (Memory Extenderの略)」という概念です。この装置は、マイクロフィルムを使用した機器です。装置は、図書館と電気的に接続されていて、所蔵する本やフィルムを表示することができて、さらにその資料同士が相互にリンクしていて、自動的に相互参照を辿って他の作品を表示するというデバイスでした。

参考:MEMEX

ハイパーテキストの歴史2 – “Project Xanadu” テッド・ネルソン (1960)

memexは、後のハイパーテキストの思想に影響を与えたものの、明確にハイパーテキストという概念を提唱するものではありませんでした。

ハイパーテキストという概念を始めて明確に提示したのは、アメリカの社会学者であり情報工学者のテッドネルソンです。ネルソンは、1960年にProject Xanaduという計画を立ち上げ、コンピュータネットワーク上にハイパーテキストをベースにしたシステムを構築しようと計画しました。「ハイパーテキスト」という用語自体、1965年にネルソンが初めて使用したものです。

Xanaduは、世界初のハイパーテキストプロジェクトであり、その設計思想も先進的で画期的なものでしたが、実装の試みはなかなか進展せず、その機能のが実現されるのはずっと後の1998年になってのことでした。

参考:PROJECT XANADU®

ハイパーテキストの歴史3 – “NLSシステム” ダグラス・エンゲルバート (1965)

NLS (oN Line System)は、アメリカ合衆国の科学者、発明家であるダグラス・エンゲルバート率いる研究者チームが1960年代にスタンフォード研究所(SRI)内の Augmentation Research Center (ARC) で設計・開発した革新的なコンピュータシステムで、世界で初めて実現されたグラフィカル・ユーザ・インターフェイスを備えたコンピュータシステムです。世界で初めてハイパーテキストリンクをコンピュータ上で実現しました。また、NLSシステムは、マウス、ラスタースキャン型ディスプレイ、グラフィカルユーザーインタフェイス、プレゼンテーションソフトウェアなどを実用化した、画期的なものでした。

1968年12月8日にサンフランシスコで行われたNLSシステムの実演は、従来にない手法でNLSシステムのデモをした素晴しいもので、「全てのデモの母 (The mother of all demos)」と呼ばれています。

参考:Doug Engelbart 1968 Demo

ハイパーテキストの歴史4 – “Hyper Card” ビル・アトキンソン (1987)

1987年にアップルコンピュータのビル・アトキンソンが開発したHyperCardは、商用ソフトウェアとしては、ハイパーテキストを実現した最初のソフトウェアです。ひとつひとつのハイパーテキストはカードという単位になっていて、カードとカードをリンクするボタンを配置することでハイパーリンクを作成することが可能となっていました。またカードにはテキストの他グラフィックを配置することが可能でした。HyperTalkというスクリプト言語を使用して簡単なプログラムやゲームなどの制作も可能で、マルチメディア・オーサリングツールといえるものでした。

WWWの誕生 – “World Wide Web” ティム・バーナーズ=リー (1990)

現在のWorld Wide Webのハイパーテキストシステムは、イギリスの計算機科学者、ティム・バーナーズ=リーによって考案・開発されました。

バーナーズ=リーは、スイス、ジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN)という世界最大の素粒子物理学の研究所で、ソフトウェア技術者として在籍していました。そこでは、数千人にのぼる研究者が在籍していおり、研究の参加者の効率良く情報を行き渡らせるということが重要な課題となっていました。

1990年、バーナーズ=リーは、NeXTコンピュータ上で、世界初のWebサーバhttpdと、世界初のWebブラウザWorldWideWebを開発し、公表しました。この世界初のWebブラウザはパブリックドメインのプログラムとして公開され、その後のWebブラウザの原型となりました。バーナーズ=リーのWorldWideWebは、http、URL、HTMLなど現在のWWWの基幹となる仕組みを全て備えたもでした。

Webブラウザの発展

バーナーズ=リーのWorldWideWebの開発の後、インターネットの一般への普及とともに、様々なWebブラウザーが開発され、多くの人々に利用されていくようになりました。主なWebブラウザーを挙げていきます。

  • ViolaWWW:1990- カリフォルニア大学バークレー校の学生だった Pei-Yuan Weiにより開発、Mosaicの登場以前は最もメジャーなブラウザだった
  • NCSA Mosaic:1993- イリノイ大学の米国立スーパーコンピュータ応用研究所(National Center for Supercomputing Applications、略称NCSA)に所属していたマーク・アンドリーセンらによって1993年に開発されたウェブブラウザ。その後、アンドリーセンはNetscape Communication社を立ち上げ、Netscape Navigatorの開発をする
  • Netscape 1994- :Mosaicを開発したマーク・アンドリーセンを中心として、Netscape Communications社によって開発されたWebブラウザ。WWWの黎明期においては、最もシェアのある代表的なブラウザだった。しかし、マイクロソフトのInternet Explorerに徐々にシェアを奪われ、1996年にはNetscapeCommunications社はAOLに買収され、1998年のNetscape Navigator 4.08を最後にリリースが終了してしまっている
  • Internet Explorer:1995- マイクロソフトが開発するウェブブラウザ。Windows に無償でバンドルされた結果、急速にシェアを拡大し、現在も最大のシェアを持ったブラウザ
  • Opera:1996- ノルウェーのソフトウェア開発会社、オペラ・ソフトウェア (Opera Software ASA) によって開発されているWebブラウザ
  • Mozilla:1998- ネットスケープは、当時人気のあったNetscape Communicatorの、大部分のソースコードをフリーソフトウェア及びオープンソースライセンス(the Netscape Public License)の下で公開した。このソースコードをベースにMozilla Foundationを中心として、フリーソフトウェアとして開発されたWebブラウザ
  • Mozilla Firefox:2002- Mozilla Foundationが開発するオープンソース・クロスプラットフォームのウェブブラウザである。2010年9月現在ウェブブラウザシェアは22.96%で第2位
  • Safari:2003- アップルにより開発されているウェブブラウザ。Mac OS X v10.3以降での、標準ウェブブラウザとなっている
  • Google Chrome : 2008- Googleが開発しているウェブブラウザ

参考:Webブラウザ年表 (Timeline of web browsers) Wikipediaより

WWWの仕組み

普段Webをブラウズしているときには、とくに気にすることはないですが、ブラウザでWebサイトを表示するまでに、その背後ではいろいろな処理が行われています。Webサイトの制作を実際に初める前に、WWWの仕組みについてしっかり理解するようにしましょう。

「ブラウザにアドレスを入力すると、画面上にページが表示される」という動作の背後でなにが行われているのか、その詳細について考えてみます。例として、千葉商科大学の「在学生の方へ」のページ http://www.cuc.ac.jp/current/index.html にアクセスするものとします。

  1. 閲覧したいWebページのアドレスを入力:http://www.cuc.ac.jp/current/index.html
  2. プロトコル(通信の方式)の種類を決定 → http://www.cuc.ac.jp/current/index.html
  3. Webブラウザは入力されたアドレスからサーバの場所を探しだすhttp://www.cuc.ac.jp/current/index.html
  4. サーバ内の書類の場所を特定 → http://www.cuc.ac.jp/current/index.html
  5. Webページのデータをサーバから手元のPCに送信
  6. PC側で受信した情報をもとに、ブラウザがページを生成し表示

WWWを支える3つのテクノロジー

WWWを閲覧するために必要となる、3つの重要なテクノロジーがあります。これは、今後Webページを制作していく上でも重要になる概念です。しっかりと理解するようにしましょう。

  • URL (Uniform Resource Locator)
    • ネットワーク上の情報を一意に特定するアドレスの指定方法
    • (スキーム名):(スキームごとに定められた何かの表現形式) という形式で表現する
    • 「http://www.cuc.ac.jp/current/index.html」はHTTPというプロトコル(通信方式)を使用して、www.cuc.ac.jpというホストにある、/current/index.html という書類を示している
  • HTTP (Hypertext Transfer Protocol)
    • WebブラウザとWebサーバの間でHTMLなどのコンテンツの送受信に用いられる通信プロトコル
    • プロトコル:コンピュータ同士が情報をやりとりするルール
  • HTML (Hypertext Markup Language)
    • ウェブ上のドキュメントを記述するためのマークアップ言語