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芸大 - 人工知能と創作 2024

最終課題制作のヒント2 – Speculative Design with Generative AI (生成AIによるスペキュラティブデザイン)

本日の内容

今回はこの講義の最終課題制作のためのヒントの2回目として、スペキュラティブデザインの手法を用いた生成AIの活用例を紹介します。スペキュラティブデザインは、Preferred futures (望ましい未来)の可能性を探るためのデザイン手法であり、既存の価値観や常識を問い直すことを目的としています。生成AIのパワーを活用して、スペキュラティブデザインの手法によって未来のシナリオを探求し現実の制約を超えた新たな可能性を模索します。

スライド資料

スペキュラティブデザインとは

スペキュラティブデザイン(Speculative Design)とは、未来の可能性やシナリオを探求するデザインのアプローチです。伝統的なデザインが現実的な問題解決を目指すのに対し、スペキュラティブデザインは、まだ実現されていない技術や社会的変化を前提に、未来のライフスタイルや文化を想像します。この手法は、批判的デザイン(Critical Design)とも関連し、既存の価値観や常識を問い直すことを目的としています。

スペキュラティブデザインは、デザイナーが未来のシナリオを描くことで、現在の問題や課題に新たな視点を提供します。たとえば、環境問題やテクノロジーの進化に伴う倫理的な課題など、複雑なテーマに対する洞察を深める手助けをします。具体的には、未来の製品やサービス、社会構造を具現化するプロトタイプやコンセプトモデルを作成し、それを通じて議論を促進します。

参考書:

アンソニー・ダン, フィオーナ・レイビー『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること』ビー・エヌ・エヌ新社 (2015)

試し読み:『スペキュラティヴ・デザイン』 第1章

参考: Not Here, Not Now / Professor Anthony Dunne from RCA

Speculative (スペキュラティブ)

  1. 思索の、思索にふける、熟考する
  2. 〔不確かな情報に基づいた〕推測の、推論の、思弁的な、空論の
  3. 《金融》投機の、投機的な、危険をはらんだ

英辞郎より

スペキュラティブデザインの文脈では、1と2の意味

The Cone of Possibilities (可能性の円錐)

出典: Speculative Design and a Cone of Possibilities
  • Probable futures (起こりそうな未来)
    • ほとんどのデザイナーはこの領域で活動
    • 世の中の多くのデザイン方法論、ツール、慣行、教育
  • Plausible futures (起こってもおかしくない未来)
    • 未来のシナリオの計画や洞察
    • 近未来の世界的状況をモデル化
  • Possible futures (起こりうる未来)
    • フィクション (文芸、映画、SF)
    • 思索的なシナリオ

※これより外の領域 → 空想

  • Preferred futures (望ましい未来)
    • 「起こりそう」と「起こってもおかしくない」が混じりあう部分
    • 未来を予測するのではなく、デザインの力で様々な可能性を切り開く
    • → スペキュラティブデザインが目指す領域

Dunne & Raby A/B

普通に実践されているデザインスペキュラティブデザイン
Affirmative 肯定的Critical 批判的
Problem solving 問題解決するProblem finding 問題を発見する
Provide answers 答えを提供するAsks Questions 問題を定義する
Design for production 生産としてのDesing for debate 討論のため
Design as solution 解決策としてのDesign as medium 手段としての
In the service of industory 産業界のためIn the service of society 社会のため
Fictional functions 虚構的な機能Functional fictions 機能する虚構
For how the world is 今ある世界のためFor how the world could be 未来のため
Change the world to suit us 人間にあわせて世界を変えるChange us to suit the world 世界にあわせて人間を変える
Science fiction サイエンスフィクションSocial fiction ソーシャルフィクション
Futures 未来Parallel worlds 並行世界
The “real” real “現実的な”現実The “unreal” real 非現実的な現実
Narrative of production 生産の物語Narrative of consumption 消費の物語
Applications 応用Imprications 意味合い
Fun 楽しみHumor ユーモア
Innovation イノベーションProvocation 刺激
Concept Design コンセプトConceptual Design コンセプチュアル
Consumer 消費者Citizen 市民
Makes us buy 買わせるMakes us think 考えさせる
Ergonimics 人間工学Rhetoric レトリック・誇張
User-friendliness ユーザーフレンドリーEthics 倫理的
Process プロセスAuthorship オーサーシップ

スペキュラティブデザイン作品例

Duune & Raby, WELLCOME WINDOWS, 2010

https://dunneandraby.co.uk/content/projects/525

「もしも…だったら (What if …. ?) 」という問いかけから構成された窓のデザイン。

  • 「もし私たちが子供を遺伝子操作できるとしたら?」
  • 「もし私たちが永遠に生きられるとしたら?」
  • 「もし私たちが動物とコミュニケーションできるとしたら?」
  • 「もし私たちが天気をコントロールできるとしたら?」

Duune & Raby, TECHNOLOGICAL DREAMS SERIES: NO.1, ROBOTS, 2007

https://dunneandraby.co.uk/content/projects/10

未来のロボットと人間との関係性について探求。独立したロボット、依存的で神経質なロボット、臆病なロボットなど、さまざまな個性を持つロボットが登場。

Neeby Robot (助けが必要なロボット)

Filip Dujardin, Untitled from the series Fictions 2009

建築写真のフォトモンタージュにより、現代の建築要素を再構成し存在しない架空の建築物を創作。

https://www.sci-fi-o-rama.com/2018/08/06/impossible-architectures-the-works-of-filip-dujardin

Josef Shulz, Formen, 2001 – 2008

https://josefschulz.com/formen

既存の産業的・商業的な構造物の写真をわずかに修正した結果浮かび上がってくる抽象的な構造の美。

Patricia Piccinini, Meet Graham, 2016

https://www.meetgraham.com.au

https://www.designboom.com/art/graham-patricia-piccinini-transport-accident-commission-car-crash-07-22-2016

交通事故の衝撃から生き残るために進化した人間の姿を想像したサイボーグのプロトタイプ。

The yes men, New York Times Special Edition, 2008

https://theyesmen.org/project/nytimes

実際のNew York Timesそっくりに模倣されたフェイク新聞。2008年のアメリカ大統領選挙でバラク・オバマが当選した直後に発行。イラク戦争の終結(という希望)など。

長谷川愛「私はイルカを産みたい…」

https://aihasegawa.info/i-wanna-deliver-a-dolphin

人間が子供を産む代わりに、絶滅の危機にある種(例えばイルカ)を代理出産するというアイデアを提案。

長谷川愛 「Parallel Tummy 2073」

https://aihasegawa.info/parallel-tummy-2073-2

「だれでも、いつでも、ひとりの子ども」というフレーズとともに人工子宮が使えるようになった50年後、2073年の東京。この設定をもとに、LARP(ライブアクションロールプレイング)というキャラクターになりきって即興的な会話や演技をする、一種のごっこ遊びの手法を用いて人工子宮がもたらす様々な倫理問題やリスク、そして喜びを炙り出すためのワークショップを行いました。ここでは3時間を超えるワークショップを要約した映像と、セッションで発生したシナリオの概要や疑問を展示しています。

課題制作例: 「生成AI + スペキュラティブデザイン」

生成AIによるスペキュラティブデザイン – Speculative Design with Generative AI

  • 生成AIのパワーを活用して、スペキュラティブデザインの手法によって未来のシナリオを探求し現実の制約を超えた新たな可能性を模索する。
  • 生成AIのパワーでスペキュラティブデザインを推し進める
  • Preferred futures (望ましい未来) を想像し表現する

スペキュラティブデザインの手法

  • 未来を探る:現実に基づいた未来のシナリオを想像し、その中でどのような課題や可能性が生じるかを探る
  • 批判的思考:現在の社会的、技術的、文化的な状況に対する批判的な視点を提供し、既存の価値観や前提を問い直す
  • 物語とシナリオ:デザインされたオブジェクトやプロトタイプを通じて、未来のシナリオや物語を具体化し作品化する

使用する生成AI

  • 最終成果物の種類に応じて自由に選択
  • ChatGPT、Dall-E、Suno、StableDiffusion、その他有料サービス (LeonardAI、RunwayMLなど)

最終成果物

  • 想像した未来のシナリオ (物語) についての解説
  • 未来のシナリオに基づいて生成AIを使用して作成した何らかのアウトプット
    • 画像
    • 映像
    • 音楽
    • 文章 (小説、詩など)
  • もし可能であれば、オープンキャンパスで展示したい!

「What if … ?」

「もしも…だったら (What if … ?) 」という問いを考える

  • 「もしも…だったら」という問いを考える
  • その問いを元に生成AIを用いて画像を生成する

単なる空想ではなく、スペキュラティブな「Preferred futures (望ましい未来)」について考える。

  • Preferred futures (望ましい未来) :「起こりそう」と「起こってもおかしくない」が混じりあう部分

最終制作アンケート

この講義ではここまで解説してきた生成AIの技術と自分自身の専門性を生かした作品制作を行い、その成果をAMCのギャラリーで展示します。どのような作品を制作する予定か下記のアンケートに記入してください。※まだ最終の確定版でなくても構いません

締切: 12月19日 (木)

アンケート

本日の講義に参加した方は以下のアンケートに答えてください。