前橋工科大学 – 工学デザイン実習 II 2024
生成芸術と生成AI
本日の実習では、まず前回の課題「生成コレクション」の講評会を行います。その後はこの実習の後半のテーマである「生成芸術 (Generative Art)」について解説していきます。こうした生成芸術を生成AIのサポートを受けながら作成する方法について説明し、最終課題を出題します。
本日の内容
- 前回の課題「生成コレクション」の発表
- 生成芸術とは? その歴史と発展
- 生成AIで生成芸術
- 最終課題について「生成AIと生成芸術」
「生成コレクション」講評会
- 一人ずつ発表してもらいます
- 以下の内容を含めて発表してください
- 作品タイトル
- 作品のテーマ – どのような意図で画像を集めたのか
- 画像生成AIを使用した感想
※ 特別選抜で工学デザインプログラムに合格した高校生の見学あり
アンケート:
今回は見学している高校生に回答してもらいます。
工学デザイン実習II (情報メディアデザイン) 最終課題
「生成AIによる生成芸術」
工学デザイン実習IIの情報メディアデザインは、生成AIを活用して生成芸術 (Generative Art) を制作します。まず始めに生成芸術とは何かを解説し、課題制作のヒントとなるような情報を紹介していきます。
課題: 「生成AIによる生成芸術」
- 生成AIを使用して、生成芸術作品を制作する
- p5.jsを用いて制作し、OpenProcessingにアップロードする
- コードの作成には生成AIをどんどん活用してください!
スケジュール
- 12月23日: 生成芸術について、制作のヒント
(冬休み)
- 1月6日: 課題制作のヒント2、制作実習、質問受付
- 1月13日: 休み (成人の日)
- 1月20日: 講評会
生成芸術 (Generative Art) とは?
映像を視聴
生成芸術の定義
Generative art is art made using a predetermined system that often includes an element of chance – is usually applied to computer based art
ジェネラティブ・アートとは、あらかじめ決められたシステムを使って作られるアートのことで、偶然性の要素を含むことが多い。
Tate. (n.d.). Generative art. Tate. Retrieved from
https://www.tate.org.uk/art/art-terms/g/generative-art
Generative art is post-conceptual art that has been created (in whole or in part) with the use of an autonomous system.An autonomous system in this context is generally one that is non-human and can independently determine features of an artwork that would otherwise require decisions made directly by the artist.
ジェネラティブ・アートとは、自律的なシステムを用いて(全体的または部分的に)制作されたポスト・コンセプチュアル・アートのことである。この文脈における自律的システムとは、一般的に人間以外のものであり、アーティストが直接決定しなければならないような作品の特徴を、独自に決定することができるものである。
Generative Art. (n.d.). In Wikipedia. Retrieved from
https://en.wikipedia.org/wiki/Generative_art
Generative art refers to any art practice where the artist uses a system, such as a set of natural language rules, a computer program, a machine, or other procedural invention, which is set into motion with some degree of autonomy contributing to or resulting in a completed work of art.
ジェネレラティブアートとは、アーティストが自然言語のルールセット、コンピュータプログラム、機械、またはその他の手続き的な発明などのシステムを使用し、そのシステムがある程度の自律性を持って作動し、完成した芸術作品に寄与したり、その結果を生み出したりする、あらゆるアート実践を指します。
Galanter, P. (2003). What is generative art? Complexity theory as a context for art theory. GA2003 – 6th Generative Art Conference. https://www.koreascience.or.kr/article/JAKO201732863553069.page
ジェネラティブアートの特徴:ランダムネスとアルゴリズム
ジェネラティブアートは、アーティストが設定したシステムが自律的に動作し、作品を生成するアートの形態だ。このシステムの中心にあるのが「アルゴリズム」であり、そこに「ランダムネス」が組み込まれることで、多様で予測不可能な結果が生み出される
1. ランダムネス(偶然性)
ランダムネスとは、予測不可能でパターンや規則性が見られない事象の性質を指す。ジェネラティブアートにおいては、乱数生成器などを用いて、システムに偶然の要素を導入することを意味する。
- コンピュータプログラムにおける乱数生成関数の使用
- 自然現象(風、水流など)の揺らぎをセンサーで取得し、アルゴリズムのパラメータとして利用
- サイコロやコイン投げなど、アナログなランダム性をシステムに組み込む
2. アルゴリズム
アルゴリズムとは、特定のタスクを実行するための、明確に定義された一連の手順やルールのこと。ジェネラティブアートにおいては、アーティストが設計したルールに基づいて、システムが自律的に動作するための「レシピ」のような役割を果たす。
- 幾何学的なパターンを生成するアルゴリズム
- 音楽のメロディーやリズムを自動生成するアルゴリズム
- 画像のピクセルを操作して、抽象的なイメージを生成するアルゴリズム
まとめ
- ランダムネスとアルゴリズムは、ジェネラティブアートにおいて相互に補完し合う関係
- アーティストが設計したアルゴリズムという「枠組み」の中で、ランダムネスが「揺らぎ」や「変化」をもたらし、予測不可能で多様な作品群が生み出される
- この二つの要素の組み合わせによって、ジェネラティブアートは、静的な芸術作品とは異なる、動的で進化し続ける表現が可能となる
Le Random
- https://www.lerandom.art/
- ジェネラティブアートの収集、文脈化、そして昇華を目的とした組織とそのWeb
- Collection: Le Randomで収集している作品
- Editorial: ジェネラティブアートに関する記事
- Timeline: ジェネラティブアートの歴史をたどる膨大な年表
Le Randomで辿るジェネラティブアートの歴史
Ben Laposky “electrical compositions” (1950)
- オシロスコープを使用して、電子機械で生成されるグラフィックの概念を考案
- 電子機械で生成された最初のグラフィック
Herbert W. Franke “Elektronische Grafik (from the Pendular Oscillogram Series)” 1956
- 最初の (アナログ) コンピュータ アート作品のひとつ
John Whitney “Vertigo” タイトルシーケンス (1958)
- 最初のコンピュータによるアニメーション
- https://youtu.be/GQwp6M2q1NE?si=Jw70W5OznEhwTSxC
A. Michael Noll “Gaussian Quadratic” (1962)
- 完全にコンピュータで作成された最初のアート作品のひとつ
- AT&Tのベル研究所で制作
Georg Nees “Computergrafik (展覧会)” 1965
- 史上初のコンピュータアート展
CTG “Return To Square (No. 1 in the Metamorphoses Series)” 1966
- GTG (Computer Technique Group)
- 槌屋治紀と幸村真佐男の出会いをきっかけに、1966年12月に山中邦夫と柿崎純一郎を加えた4人(最終的に10名)で結成されたコンピュータ・アート集団
Frieder Nakel “Walk-Through-Raster” 1966
- 1966 年にComputers and Automation誌で最優秀賞を受賞
- ALGOL 60 プログラミング言語と Z64 Graphomat プロッターを使用
Jasia Reichardt “Cybernetic Serendipity” (展覧会) 1968
- コンピュータアートの初の国際展、ロンドン現代美術館で開催
- 参加アーティスト: A. Michael Noll, Frieder Nake, Georg Nees, CTG and Charles Csuri, Nam June Paik, Jean Tinguely, John Cage, Jeanne Beaman, John Whitney, Ken Knowlton など
Vera Molnár “Interruptions” 1968
- 自身のアルゴリズムによってランダムに配置されたさまざまな角度の直線形状のみで構成
- コンピュータを使用して作品を生成する最初の女性アーティストのひとり
- 自律描画マシンであるAARONは、AIを使用したアート制作のパイオニア
- 人間とマシンのコラボレーション
Vera Molnár “(Des)Ordres” 1974
- タイトルは、フランス語で「désordres」(無秩序) と「des ordres」(秩序) という2つの意味の言葉遊びを示唆
- 人工生命 (Artificial Life, A-Life)
- 遺伝的アルゴリズムを使用して、進化する生命体のシミュレーションを行う
William Latham “The Evolution of Forms” 1990
- 偶然の突然変異と創造的な選択を組み合わせて、非常に複雑で進化し続ける3D形状を生み出す
Kerl Sims “Primordial Dance” 1991
Casey Reas and Ben Fry “Processing” 2001
- John Maedaの指導の下、MITのACGでCasey ReasとBen Fryによって作成
- クリエイティブ・コーディングを世界に飛躍的に広めた
Casey Reas “Process Compendium Series” 2004 – 20014
- https://vimeo.com/39078622
- 形態、動作、プロセスという基本要素に基づいて構築されており、選択した視覚的文法を使用して、多種多様な視覚的構成を生み出す
Zach Lieberman “Open Frameworks” 2005
- https://openframeworks.cc/
- 創造的なコーディングのためのC++のオープンソースツールキット
The Recode Project
- The Recode Project – An active archive of computer art.
- 黎明期のコンピュータ アートを最新のプログラミング言語 (Processing) に翻訳して保存するコミュニティ主導の取り組み
OpenProcessing
- OpenProcessing
- ジェネラティブアートのクリエイティブコーダーのコミュニティー