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メイキング・オブ・ピクサー
「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」、最近では「WALL・E」が大ヒットして絶好調のピクサーの波乱の歴史を描いたノンフィクション。いろいろ初めて知る事実ばかりで、あっという間に読み終えてしまった。おススメ。
ピクサーといえば、初期からそのアニメーションに携わりピクサーの主要な長編作品を監督した、ジョン・ラセターが有名だと思う。僕もピクサーといえば、ジョン・ラセターとスティーブ・ジョブスくらいしか知らなかった。この本でも、もちろんこの2人について詳しくその半生を描いているのだが、より重要な人物としてこの本ではエド・キャットムルという男について多くのパートを裂いている。
ちなみに、エド・キャットムルは現ピクサー社長なのだが、決してジョブスのような根っからのビジネスマンではなく、もともとはCGの黎明期から活躍した科学者なのだそうだ。テクスチャマッピング、Zバッファ、Bスプラインなどの手法の全ては、若き日のキャットムルの発明・発見ということを知ると、3DCGをちょっとやったことがある人なら、驚くのではないだろうか。若くして、今の3DCGの技術を支える基礎理論の大半を一人で作ってしまったというような偉人なのだ。
それだけの実績がありながら、決して満足しない。彼の夢はいつか長編アニメーション映画を作ることであって、CG技術の研究もその過程に過ぎなかったらしい。しかし、その後の人生は順調ではない。詳しくはこの本に書かれているのだが、無名の大学の研究者、ILMの技術者などを渡りあるくものの、なかなか思い通りの仕事ができず、仲間とともにCGの関連技術を開発しながらなんとか凌いでいく。
ようやく、スティーブ・ジョブスの支援でピクサー社をILMから独立させるのだが、実は当初のピクサーはアニメーションを作る会社ではなく、「ピクサー・イメージ・コンピュータ」というCGのための専用ハイエンド・ハードウエアーを売る会社だったらしい。これもこの本を読んで知った初めての事実。ちなみにイメージ検索してみたところ、こんな形状をしたマシン。デザインはジョン・ラセター。
その後もいろいろな紆余曲折があり、「トイ・ストーリー」がヒットして、ようやくコンピュータアニメーションのスタジオとしてやっと認められるようになり、現在に至る。
この目標を据えた後の粘り強さは、とても真似できないと思った。1960年代初頭にCGの研究を開始してから、1995の公開の「トイストーリー」まで、その潜伏期間は30年以上もある。ものすごい執念。そうした経緯を知ってからピクサー作品を改めて見ると、また違った感慨が湧いてきそうな気がする。
仕事を始めてたった十数年で思い通りにいかないなどと嘆くのは、文字通り十年早いと思いしらされました。もっと精進します。
あと、Appleは好きだけど、ジョブスの下で働くのはちょっと嫌だなーと思った。かなり辛辣に描かれてます。