前橋工科大学 - 工学デザイン実習 IIIc 2024
第2課題出題 – Speculative Design with Generative AI (生成AIによるスペキュラティブデザイン)
工学デザイン実習IIIcの第二課題のテーマは、「Speculative Design with Generative AI (生成AIによるスペキュラティブデザイン)」とします。以下でその課題の内容について説明していきます。
スペキュラティブデザインとは
スペキュラティブデザイン(Speculative Design)とは、未来の可能性やシナリオを探求するデザインのアプローチです。伝統的なデザインが現実的な問題解決を目指すのに対し、スペキュラティブデザインは、まだ実現されていない技術や社会的変化を前提に、未来のライフスタイルや文化を想像します。この手法は、批判的デザイン(Critical Design)とも関連し、既存の価値観や常識を問い直すことを目的としています。
スペキュラティブデザインは、デザイナーが未来のシナリオを描くことで、現在の問題や課題に新たな視点を提供します。たとえば、環境問題やテクノロジーの進化に伴う倫理的な課題など、複雑なテーマに対する洞察を深める手助けをします。具体的には、未来の製品やサービス、社会構造を具現化するプロトタイプやコンセプトモデルを作成し、それを通じて議論を促進します。
Speculative (スペキュラティブ)
- 思索の、思索にふける、熟考する
- 〔不確かな情報に基づいた〕推測の、推論の、思弁的な、空論の
- 《金融》投機の、投機的な、危険をはらんだ
英辞郎より
スペキュラティブデザインの文脈では、1と2の意味
The Cone of Possibilities (可能性の円錐)
- Probable futures (起こりそうな未来)
- ほとんどのデザイナーはこの領域で活動
- 世の中の多くのデザイン方法論、ツール、慣行、教育
- Plausible futures (起こってもおかしくない未来)
- 未来のシナリオの計画や洞察
- 近未来の世界的状況をモデル化
- Possible futures (起こりうる未来)
- フィクション (文芸、映画、SF)
- 思索的なシナリオ
※これより外の領域 → 空想
- Preferred futures (望ましい未来)
- 「起こりそう」と「起こってもおかしくない」が混じりあう部分
- 未来を予測するのではなく、デザインの力で様々な可能性を切り開く
- → スペキュラティブデザインが目指す領域
参考: Not Here, Not Now / Professor Anthony Dunne from RCA
普通に実践されているデザイン | スペキュラティブデザイン |
---|---|
Affirmative 肯定的 | Critical 批判的 |
Problem solving 問題解決する | Problem finding 問題を発見する |
Provide answers 答えを提供する | Asks Questions 問題を定義する |
Design for production 生産としての | Desing for debate 討論のため |
Design as solution 解決策としての | Design as medium 手段としての |
In the service of industory 産業界のため | In the service of society 社会のため |
Fictional functions 虚構的な機能 | Functional fictions 機能する虚構 |
For how the world is 今ある世界のため | For how the world could be 未来のため |
Change the world to suit us 人間にあわせて世界を変える | Change us to suit the world 世界にあわせて人間を変える |
Science fiction サイエンスフィクション | Social fiction ソーシャルフィクション |
Futures 未来 | Parallel worlds 並行世界 |
The “real” real “現実的な”現実 | The “unreal” real 非現実的な現実 |
Narrative of production 生産の物語 | Narrative of consumption 消費の物語 |
Applications 応用 | Imprications 意味合い |
Fun 楽しみ | Humor ユーモア |
Innovation イノベーション | Provocation 刺激 |
Concept Design コンセプト | Conceptual Design コンセプチュアル |
Consumer 消費者 | Citizen 市民 |
Makes us buy 買わせる | Makes us think 考えさせる |
Ergonimics 人間工学 | Rhetoric レトリック・誇張 |
User-friendliness ユーザーフレンドリー | Ethics 倫理的 |
Process プロセス | Authorship オーサーシップ |
スペキュラティブデザイン作品例
Duune & Raby, WELLCOME WINDOWS, 2010
https://dunneandraby.co.uk/content/projects/525
「もしも…だったら (What if …. ?) 」という問いかけから構成された窓のデザイン。
- 「もし私たちが子供を遺伝子操作できるとしたら?」
- 「もし私たちが永遠に生きられるとしたら?」
- 「もし私たちが動物とコミュニケーションできるとしたら?」
- 「もし私たちが天気をコントロールできるとしたら?」
Duune & Raby, TECHNOLOGICAL DREAMS SERIES: NO.1, ROBOTS, 2007
https://dunneandraby.co.uk/content/projects/10
未来のロボットと人間との関係性について探求。独立したロボット、依存的で神経質なロボット、臆病なロボットなど、さまざまな個性を持つロボットが登場。
Filip Dujardin, Untitled from the series Fictions 2009
建築写真のフォトモンタージュにより、現代の建築要素を再構成し存在しない架空の建築物を創作。
https://www.sci-fi-o-rama.com/2018/08/06/impossible-architectures-the-works-of-filip-dujardin
Josef Shulz, Formen, 2001 – 2008
https://josefschulz.com/formen
既存の産業的・商業的な構造物の写真をわずかに修正した結果浮かび上がってくる抽象的な構造の美。
Patricia Piccinini, Meet Graham, 2016
交通事故の衝撃から生き残るために進化した人間の姿を想像したサイボーグのプロトタイプ。
The yes men, New York Times Special Edition, 2008
https://theyesmen.org/project/nytimes
実際のNew York Timesそっくりに模倣されたフェイク新聞。2008年のアメリカ大統領選挙でバラク・オバマが当選した直後に発行。イラク戦争の終結(という希望)など。
長谷川愛「私はイルカを産みたい…」
https://aihasegawa.info/i-wanna-deliver-a-dolphin
人間が子供を産む代わりに、絶滅の危機にある種(例えばイルカ)を代理出産するというアイデアを提案。
改めて課題について: 「生成AI + スペキュラティブデザイン」
課題: 生成AIによるスペキュラティブデザイン – Speculative Design with Generative AI
- 生成AIのパワーを活用して、スペキュラティブデザインの手法によって未来のシナリオを探求し現実の制約を超えた新たな可能性を模索する。
- 生成AIのパワーでスペキュラティブデザインを推し進める
- Preferred futures (望ましい未来) を想像し表現する
スペキュラティブデザインの手法
- 未来を探る:現実に基づいた未来のシナリオを想像し、その中でどのような課題や可能性が生じるかを探る
- 批判的思考:現在の社会的、技術的、文化的な状況に対する批判的な視点を提供し、既存の価値観や前提を問い直す
- 物語とシナリオ:デザインされたオブジェクトやプロトタイプを通じて、未来のシナリオや物語を具体化し作品化する
使用する生成AI
- 最終成果物の種類に応じて自由に選択
- ChatGPT、Dall-E、Suno、StableDiffusion、その他有料サービス (LeonardAI、RunwayMLなど)
最終成果物
- 想像した未来のシナリオ (物語) についての解説
- 未来のシナリオに基づいて生成AIを使用して作成した何らかのアウトプット
- 画像
- 映像
- 音楽
- 文章 (小説、詩など)
- もし可能であれば、オープンキャンパスで展示したい!
スケジュール
- 6月10日: 第2課題出題・制作方法解説
- 6月17日: エスキース 1
- 6月24日: エスキース 2
- 7月01日: エスキース 3
- 7月08日: エスキース 4
- 7月15日: エスキース 5
- 7月22日: 展示設営
- 7月29日: 全課題展示、講評
次回までの課題 「What if … ?」
課題: 「もしも…だったら (What if … ?) 」という問いを考える
- 「もしも…だったら」という問いを考える
- その問いを元に生成AIを用いて画像を生成する
次回に簡単にプレゼンしてもらいます!
単なる空想ではなく、スペキュラティブな「Preferred futures (望ましい未来)」について考える内容で考えてきてください。
- Preferred futures (望ましい未来) :「起こりそう」と「起こってもおかしくない」が混じりあう部分
アンケート
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